スポーツ班

当科ではスポーツ・ウェルネスクリニックを併設しており、スポーツ選手や愛好家を対象に、外傷、障害に対して競技復帰に向けたアスレチックリハビリテーションを含めた治療を行っています。

スポーツ・ウェルネスクリニック

診療内容

  • スポーツ選手およびスポーツ愛好家のスポーツ外傷、障害の診断、治療(外来治療)
  • スポーツ選手およびスポーツ愛好家の内科的疾患の診断、治療(外来治療)
  • テーピングクリニック

当大学のスポーツ・ウェルネスクリニックの特徴

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当大学のスポーツクリニックは1985年に全国に先駆けて発足しました。当科では、スポーツによって生じた怪我(外傷)や障害に対する現場復帰までの治療のみならず、その再発予防にも力を入れて取り組んでいます。すなわち、外傷や障害を負った局所だけではなく、それを生じた原因となる他の身体的な問題点を抽出し、これに対する治療も行っています。

さらに、スポーツは種目による特異性を有するため、実際の競技復帰に向けたトレーニングの際には、この競技特異性を考慮したプログラムの作成を行っており、これらのアスレチックリハビリテーションは、併設のトレーニングルームを利用し、理学療法士やトレーナーとともにそれを実践しています。

手術が必要と判断された場合には、整形外科と綿密な連携のもと、各専門スタッフが手術を担当し、術後早期から当科にてリハビリテーションを開始できる体制が充実しています。また、チームとの提携のもと、試合での帯同活動やプレシーズンにおけるメディカルチェックも行っています。

部位別にみた代表的なスポーツ傷害

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投球肩障害(腱板損傷、骨端線損傷、関節唇損傷などを含む)
野球肘、テニス肘
脊椎分離症、椎間板ヘルニア
骨盤 裂離骨折、疲労骨折
鼠径部痛症候群、関節唇損傷
大腿 肉離れ
半月板損傷、前十字、後十字靱帯損傷、内側側副靱帯損傷、骨端症(オスグットシュラッター病)、分裂膝蓋骨
下腿 疲労骨折、肉離れ
足関節靱帯損傷、疲労骨折、骨端症(有痛性外脛骨、シーバー病)、衝突性外骨腫、足底筋膜炎、三角骨障害

代表的疾患の解説

1. 投球肩障害

野球を代表とするオーバーヘッド動作を伴う種目で、投げる時に痛みを生じるものです。ハンドボールやテニスのサーブ、スマッシュ、さらにバレーボールのスパイクなどでもみられます。

野球の投球動作に絞ってみますと、まず、投球動作の基本的なメカニズムは、下半身で蓄えたエネルギーをボールのスピードに効率良く変える、すなわち下半身と上半身の運動連鎖から成り立っています。投球動作は大きく6つの段階に分けることができ、一つ一つの動作がこの効率性を高める要素になっています(図1)

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痛みの原因は基本的にはオーバーユースによることが多いものですが、それに加えて、肩に負担のかかる非効率的な投球動作に起因することが少なくありません。すなわち、下半身の柔軟性の低下、体重移動の不足、体幹の不安定性、肩甲骨面に対する過度の伸展動作などによって、いわゆる"手投げ"となり、肩の障害をきたすことです。

当科では、まず、単純X線写真やMRIなども併用して局所の診察を行い、診断を決定します。MRIでは、関節唇損傷や腱板損傷、上腕二頭筋腱損傷などがみられることもあります。さらに、身体の柔軟性の評価、筋力の評価を行い、これにより、投球動作の禁止期間やその間に必要なリハビリテーションを設定します。

次第に疼痛が軽減され、さらに問題となっていた柔軟性や筋力が改善してくれば、実際にシャドーの投球動作を行い、フォームをチェックすることにより、先に述べた注意点についてイラストを用いて理解し、これらを修正するよう指導しています(図2)

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これらの段階を経て、実際にボールを使用しながらの投球練習を行い、段階的に完全復帰へと移行していきます。このような系統的治療を行うことにより、投球動作による肩、肘障害の手術率や復帰後の再発率が大幅に低下しています。

2. 脊椎分離症

腰骨の後ろの部分を構成する骨の疲労骨折で、成長期の第5腰椎に多く発生します。腰を後ろに沿って捻る動作の繰り返しによって生じるとされ、いろいろなスポーツ競技でみられます(図3)。

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すべての疲労骨折に対して言えることですが、とくにこの脊椎分離症に関しては、早期発見、早期治療が重要です。なぜなら、分離症は完成してしまうと自身の力で再び骨癒合を得ることができなくなってしまうからです。

また、発生年齢も成長期という大事な時期に多いので、腰の痛みをなかなか監督やコーチに伝えられず、治療が遅れてしまうこともしばしば経験します。早期診断には、MRIが有用で、初期の段階で発見すれば治癒率はかなり高まります(図4)。腰の痛みが継続する場合には、早めに受診し、適切な診断のもと治療を行うことが重要です。

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3. 鼠径部痛症候群

サッカー選手に好発し、股関節の前側を中心に痛みを生じるものです。痛みの場所は多岐にわたり、内側の内転筋、中心部の恥骨、腹筋下部、前側の大腿直筋などさまざまです。当科では、サッカー選手に好発することから、キック動作との関連性に注目し、キック動作の3次元動作解析を行いました(図5)。

その結果、キックインパクト直後に股関節周囲に力学的負担がかかることが推測されました。また、上半身との連動性にも注目し、上肢をうまく使えないキック動作では、効率が低下するのみならず、この力学的負荷が増大するといった興味深い結果が得られました。

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診断に際しては、MRIなどを併用して行い、リハビリでは、柔軟性の獲得のみならず、このような上半身と下半身との連動性の獲得を主体として行っています。また、復帰に際しても、サッカーの競技特異性を考慮し、ジョグからトップスピードでのパフォーマンスを段階的に分け、それぞれの選手の状態に合わせて完全復帰へと進めています。

4. 下肢の疲労骨折

疲労骨折は、繰り返されるストレスが骨にかかることによって生じるもので、常に、治ろうとする力と折れようとする力が混在しますが、ついには後者が前者を上回り、骨折を生じてしまいます。

好発部位は、骨盤、脛骨(すね)(図6)、腓骨、足根骨(図7)、中足骨(図8)と、先に述べた腰椎分離症を含めて、圧倒的に腰から下に多いのが特徴です。また、ゴルフによる肋骨の疲労骨折も知られています。

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あらゆるスポーツに発生しますが、競技特異性をもつものもあり、ランナーの脛骨、中足骨、サッカーの第5中足骨基部(図9)の骨折はよく知られています。女子選手においては、体重増加を嫌い、栄養摂取不足、月経異常、骨粗鬆症を招き、とくに陸上長距離ランナーではこの疲労骨折になりやすいことが知られています。

これも早期に発見することで治癒期間は短縮しますが、初期の段階では単純X線写真では異常を認めないことが多く、確定診断にはMRIが有効で、疲労骨折の初期では骨の浮腫(腫れ)として捉えられます。

治療は、通常の外傷に伴う骨折のようにギプスなどによる固定は必要ありませんが、骨折部に負担がかからないような安静とその間の他の部位に対するトレーニングを行います。ただし、難治性の疲労骨折に対しては、早期復帰のために手術療法を第一選択とするものもあります。

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5. 成長期のスポーツ障害

鬼ごっこ、木登り、缶蹴り・・など、小さい頃の外遊びは、その後の心身の成長に大きな影響を及ぼします。スポーツ自体が遊びから発生したものですから、後々スポーツが得意になるということは、小さい頃、いかに遊んでいたかと言っても過言ではないでしょう。

しかし、近年では少子化や塾通い、テレビゲームの普及、環境問題などから、子供が外で遊ぶ機会が減り、子供の体力不足が社会問題にまで発展しています。このような背景下、一方では、小さい頃から同一競技に従事させることも多く、投げる、蹴る、飛ぶなどを過度に繰り返し行うと、スポーツ障害も増加します。成長期における骨、関節の特性は、骨の端の方に骨が伸びる成長線と呼ばれる軟骨が存在し、これが靱帯、腱よりも力学的に弱いということです。

筋肉は腱となって骨に付着しますが、成長期では、骨は伸びるものの、この筋肉が骨の成長に追いついていけない、さらにスポーツによって筋肉をどんどん収縮させてしまい、骨と筋肉の成長のアンバランスを生じ、これが力学的に弱い成長線やその末梢の骨端の損傷を招くことになります。

代表的なものが、野球に多い肩障害のうち、肩の成長線の損傷であるリトルリーガーズショルダー(図10)やいわゆる成長痛と呼ばれる膝のオスグッド病(図11)が挙げられ、また、膝のお皿が分かれている分裂膝蓋骨(図12)、踵の痛みのシーバー病(図13)や足の内側の骨が出っ張って痛む有痛性外脛骨(図14)などがあります。

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さらに、成長期では、骨の表面の軟骨が剥がれてしまう離断性骨軟骨炎があり、肘と膝(図15)が好発部位です。また、筋肉の強い収縮によって、付着する骨が成長線のところで剥がれてしまう裂離骨折が生じることもあります(図16)。

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これらの障害は、いずれも成長期における身体特性から発生するものですが、逆に成長期では治ろうとする自己修復能力が高いことも特徴です。自己修復能力も追いつかない程に長期間放置してしまうと元にもどらず、手術を要するものもあります。従って、早期に発見し、早期に治療を開始することが最も重要です。痛みが生じた場合には、決して長い間我慢せずに受診することをお勧めします。治療にあたっては、監督、コーチ、親にも疾患を理解してもらうことが重要ですので、当科ではメディカルレポートを作成するなど、その連携を円滑に行えるよう努めています。

6. 足関節捻挫

捻挫の中でも足関節の捻挫が最も頻度が高いものです。通常、足を内返しに捻り、外側の靱帯(前距腓靱帯、踵腓靱帯)を損傷します。これらの靱帯の損傷の程度によって重症度が決定しますが、概ね保存療法が選択されます。すべての外傷に言えることですが、初期ではRICE* 治療が重要で、その処置のいかんによって予後が左右されるといっても過言ではありません。

初期においては、早く炎症が治まるように正しいRICE治療を理解し、実践できるようにしておくことが重要です。次第に痛みや腫れが引いていきますが、その後に適切なトレーニングを行わないままプレーに復帰すると再発しやすいことがこの足関節捻挫の特徴です。捻挫を受傷後、足関節の動きが悪くなったり、足関節周囲の筋力が落ちたり、バランス感覚が鈍ることがその原因と考えられています。

従って、初期治療後は、これらに対するリハビリテーション(図17)やプレー中の正しいテーピング(図18)を行うことが重要であり、当科では、これらを指導、実践しています。 * RICE : R ; Rest(安静), I ; Icing(冷却), C ; Compression(圧迫), E ; Elevation(挙上)

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7. 肉離れ

肉離れは大腿の前面、後面、ふくらはぎに好発します。疾走中やボールを蹴る時に突然蹴られたような痛みが発生します。肉離れは、筋肉が収縮しているにもかかわらず、伸ばされる時に発生し、筋肉を覆っている筋膜が損傷し、出血を伴います。肉離れに対しても他の外傷と同様に初期のRICE治療が重要です。その後は、とくに、ストレッチを開始する時期が問題となりますが、MRIなどの所見(図19)をもとに病態に応じて順次リハビリを行っています。

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スポーツ傷害に対する関節鏡視下手術

当科では、手術が必要と判断したスポーツ傷害に対しては、侵襲の少ない関節鏡手術をgold standard として取り組んでいます。代表的な手術を紹介します。

膝前十字靱帯損傷(ACL損傷)

膝前十字靱帯(ACL)断裂は、ジャンプの着地や急な方向転換(カッティング動作)で受傷することが多く、断裂後、機能不全が強い場合には、膝関節の不安定性のためにスポーツ活動の継続が困難になります。また、不安定のまま放置すると、膝関節の内側と外側にある荷重分散機能を果たす半月板の損傷を続発することがあります。ACL損傷の治療では、膝関節の不安定性の程度、年齢、競技種目や活動性など個々の状況に応じて保存療法と手術療法を選択しています。手術療法が必要な場合には、当科では移植腱を用いた再建術を行います(図1)が、術前からリハビリテーションを開始し、術後はスポーツ復帰に向けて段階的にプログラムを進め、個々の達成度に準じて安全にスポーツ競技へ復帰できるようにサポートしています。

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肩関節疾患に対する関節鏡視下手術

スポーツに伴う反復性肩関節脱臼、腱板損傷、投球障害肩、関節唇損傷などに対して行っています。詳細は肩関節班と重複しますので、そちらを参照下さい。

足関節鏡手術

当科では、足のスポーツ傷害に対しても手術が必要となった場合には関節鏡視下手術を行っています。サッカーやバレエに特徴的な後方インピンジメント症候群(三角骨障害)に対する三角骨切除、長母趾屈筋腱鞘切除(図2)や関節内遊離体に対する遊離体切除術などが代表的です。

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メディカルチェックについて(自費診療)

プレシーズンにメディカルチェックを行い、シーズン中の障害発生予防に努めています。現在では、提携チームのみ行っておりますが、ご希望の団体はご相談下さい。

特殊検査

サイベックスNORM による筋力測定、最大酸素摂取量の測定、乳酸測定、運動負荷試験、アスレティックリハビリテーションの指導を行っています。

研究

  • プロフェッショナルを含むスポーツ選手、中高年のスポーツ愛好家、成長期、女子のスポーツ選手、特殊環境に関するスポーツ医学についての研究
  • 3次元モーションキャプチャシステムを用いてサッカーのキック動作における骨盤の動作解析
  • 疲労骨折や微弱電流に関する研究
  • 女性アスリートの骨代謝に関する研究
  • 前十字靱帯再建後の神経・筋協調性の回復に関する研究
  • 投球障害肩に関する研究
  • 成長期スポーツ障害の予防に関する研究
  • 腱付着部障害(アキレス腱や膝蓋腱などの腱炎・腱症、および上腕骨内・外側上顆炎など)、靭帯損傷(肘関節や膝関節周囲の靱帯損傷など)に対するPRP療法の有効性及び安全性に関する研究

診療スタッフ

  • 舟﨑 裕記

    教授

    舟﨑 裕記

  • 林 大輝

    助教

    林 大輝

  • 窪田 大輔

    助教

    窪田 大輔

  • 村山 雄輔

    助教

    村山 雄輔

  • 永井 聡子

    助教

    永井 聡子

大学非常勤医師

杉山肇

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

六本木哲

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

梶原宗介

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

小田治男

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

清水正人

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

金潤壽

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

加藤晴康

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

油井直子

非常勤診療医長(スポーツ外傷・障害)

附属病院(本院)専門外来

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なお、再診に関しましては予約制となっております。

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