骨代謝班は斎藤充、前田和洋、荒川翔太郎からなる研究班ではありますが、骨代謝にかかわる疾患の治療、研究を行っております。 講座における骨粗鬆症研究は古く、腰椎単純X線側面像を利用して骨粗鬆症の程度を判定する慈大式分類は現在でも用いられています。 また、当教室発信の「骨折リスク因子としての骨質:コラーゲンの重要性」の概念は,国内外で多くの追試をうけ、その妥当性が証明されつつあります。
★当専門外来で担当するのは「難病性」の原発性骨粗鬆症、続発性骨粗鬆症、骨軟化症、骨 Paget 病などの専門性の高い疾患の方々です。
★当専門外来で検査の後,かかりつけ医にご紹介するのは「軽度から中等度」の原発性骨粗鬆症の患者さんです。各種ホルモン、骨代謝マーカーを測定し、かかりつけ医もしくは近医へ情報提供をいたします。
前医からの紹介状(これまでの骨粗鬆症治療歴や病歴)や骨密度測定の結果などをお持ちください。 本院の骨代謝専門外来は、完全予約制です。かかりつけの先生に医療連携室を通してFAX予約をお願いします。 骨粗鬆症や変形性膝関節症(膝の痛み)には関連があることがわかってきました。膝の痛みを感じている骨粗鬆症のかたはご相談ください。
骨粗鬆症(原発性、続発性)現在の日本の骨粗鬆症人口は、1260万人と推計されています。骨粗鬆症に伴う骨折は、いわゆる「寝たきり老人」を生み出す原因となることや、死亡のリスクを高めることが明らかにされています。
骨粗鬆症で最も多い骨折は、背骨の骨折です。背骨の骨折は、「痛みを伴わずに、いつの間にか骨折する方」が、3人に1人もいらっしゃいます。そのまま放っておくと、5人に1人が、1年以内に別の部位の背骨が骨折してくることが分かっています。
痛みを伴わずにドミノ倒しのように骨折し、背中が丸くなります。
身長が若いときに比べて「4cm低下」していたら、背骨に骨折の可能性あり!
痛くなくても、背骨のレントゲンをとることが大事です。
背骨の骨折の進行は、その後の死亡のリスクを8倍も高めてしまいます。骨粗鬆症の治療は、要介護を避けるだけではなく、生命予後を改善することにもなります。
最近の研究から、
当研究班の調査から、骨粗鬆症患者さんでは、骨や血管に含まれるコラーゲンという蛋白を、つなぎ止める構造体である「架橋(鉄筋同士をつなぎ止める梁に相当)」に異常があることが明らかとなりました。現在、こうした異常を、尿や血液検査で調べることが可能となってきました。
(後述「悪玉架橋:ペントシジン、ホモシステイン」参照)
さらに、コラーゲンの繋がり(架橋)に異常が生じると、例え骨密度が高くても骨折をおこしやすくなることを、世界で初めて明らかにしました。これらの成果は、骨代謝・骨粗鬆症関連学会から12の学会賞を受賞するに至っています。
骨粗鬆症はご存知のように易骨折性を呈する疾患で、骨密度の低下がその原因の一つと考えられています。そのため、治療に際しては骨密度を増加させる薬を使用されます。しかし、最近の研究から骨の強さは「骨密度さえ高ければ骨は強い」という概念は必ずしも十分ではないことが明らかになってきました。
骨は「鉄筋コンクリート」の建造物によく似た構造をもっており、鉄筋に相当するのがコラーゲンと言う蛋白質で、コンクリートに相当するのがカルシウムからなるハイドロキシアパタイトです。そして、隣あうコラーゲン同志をつなぎ止める架橋(建造物に例えるならば鉄筋同志をつなぎ止めるビスのような役割)と呼ばれるものがあり、我々はそれに注目し研究を続けてきました。その結果、その架橋の善し悪し(「善玉架橋(良い梁)」と「悪玉架橋(悪い梁)」)が、骨の強さを決める重要な因子であることを初めて明らかにしました。
コラーゲンの異常を知るマーカー「骨質マーカー:ペントシジン,ホモシステイン」測定や、同マーカー測定に基づく「テーラーメイド治療」の取り組みは、読売新聞,日本経済新聞,朝日新聞,東京新聞などに特集されています。当研究班の斎藤充は、各メディアで紹介され、骨質(コラーゲン架橋)の重要性を解説しています。 以下、webページ,新聞記事にアクセスいただき、当院での取り組みを知っていただけましたら幸いです。
★注★「骨質マーカー(ペントシジン,ホモシステイン)は現在、研究段階です.外来での測定はできません。
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骨粗鬆症患者さんは、骨密度と骨質の善し悪しで、3つのタイプに分けることが出来ます。骨折リスクを、「骨密度が高く骨質の良い人」と比べると、骨密度が高く骨質が悪い「骨質劣化型」は1.5倍高く、骨密度が低く骨質が良い「低骨密度型」は3.6倍高いことが明らかにしました。さらに!骨密度が低く骨質も悪い「低骨密度+骨質劣化型」は、なんと7.2倍にもなることを見出しました。
骨質は血液や尿検査で調べることが出来ます。「血中のホモシステインという悪玉アミノ酸か、血中や尿中のペントシジン(悪玉架橋)の濃度を調べます。ホモシステインは悪玉の構造を増やすアミノ酸、ペントシジンは悪玉架橋そのものです。患者さんが「骨質劣化型か否か」は、これらの検査で調べることができます。
また、既に「糖尿病,高血圧,動脈硬化,腎機能障害(CKD),慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と言われたことがある方は、「骨質劣化型」である可能性が高いことから、骨密度検査で正常と言われても、安心してはいけません。 「骨質劣化型」の患者さんは、薬剤治療により、単に骨密度を増加させても、新たな骨折を起こす可能性が高いことが分かってきました。このため、骨密度を高める治療以外に、骨質を改善できる薬剤やビタミン(ビタミンK,D)の併用が有効です。
斎藤充:筆頭著者:骨質関連63編(2011年5月現在):医中誌にて、key word「斎藤充 東京慈恵会医科大学」で検索してください(サイトウのサイは、「斎」)。
教授
斎藤 充
講師
前田 和洋
助教
荒川 翔太郎
初診の方は、かかりつけ医療機関に紹介状の作成とFAX予約をご依頼いただくとスムーズな受診が可能となります。
なお、再診に関しましては予約制となっております。